宮城県仙台市内のケヤキ並木が美しい新緑に包まれる毎年5月の第3土・日曜に開催される「仙台・青葉まつり」。毎年10,000人を超える市民が参加し、観光客の数も100万人に達する勢いのこのお祭りは、8月の「仙台七夕まつり」、1月の「大崎八幡神社の松焚祭」と並ぶ「仙台三大まつり」の一つに数えられています。
なんと2022年度は3年ぶりに第38回仙台青葉まつりを開催。日程は5月14日(土)と15日(日)です。
今回はそんな仙台・青葉まつりの歴史と、地元民が教える楽しみ方をご紹介。踊って食べて盛り上がる、2日間の見どころをお伝えしていきます。
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新緑の仙台が伊達色で彩られる「仙台・青葉まつり」とは
仙台・青葉まつりとは?伊達政宗公に由来する歴史がある
奉納提灯が吊るされた伊達門(定禅寺通中央緑道)
宮城県仙台市内のケヤキ並木が美しい新緑に包まれる毎年5月の第3土・日曜に開催される「仙台・青葉まつり」。仙台三大祭りの一つとして市民だけでなく県外からも多くの観光客が訪れる人気のお祭りです。
江戸時代、伊達政宗公により藩政が敷かれた頃の仙台では、仙台東照宮の例祭である「仙台祭」が仙台最大のお祭りでした。1655年から江戸時代末期に渡って藩をあげて盛大に行われ、70基もの山鉾(やまぼこ※)が城下を練り歩く大規模な祭りだったと伝えられています。
ところが明治時代になると「仙台祭」に代わって伊達政宗公をご神体として祀る青葉神社の例祭「青葉祭り」が台頭し、政宗公の命日である毎年5月24日に神輿渡御などの祭りが行われるようになりました。しかしその「青葉祭り」も1965年以降になると、交通事情などによって開催が難しくなり、しばらく途絶えてしまいます。
※山鉾とは、山型の飾りの上にほこやなぎなたを立てた山車(だし)の一つ。神社の祭礼の際に引かれる

本まつりで山鉾巡行の先頭を行く参加企業団体ののぼり(定禅寺通り)
現在の「仙台・青葉まつり」は、伊達政宗公没後350年を迎えた1985年に、「仙台祭」と「青葉祭り」両方の精神を受け継ぎ、仙台藩祖である伊達政宗公の偉業をしのび、伊達の文化と歴史を伝承・発展させるために「市民総参加のまつり」として復活したものです。
現在では2日間で10,000人以上の市民が参加。「伊達の粋」を満喫できる仙台の初夏の風物詩として定着しました。それに伴い仙台を訪れる観光客の数も年々増加し、第35回目となる2019年度の観光客は、過去最多の971,500人にのぼりました(仙台市商工会議所調べ)。
仙台・青葉まつりの見どころ
準備期間でも祭りの雰囲気たっぷり

深夜に設営中の山鉾(サンモール一番町入口)
お祭りの1週間前になると、仙台市内中心部のアーケードの各所で山鉾の設営が始まります。作業は交通量の少ない夜半に行われるため、平日の仕事帰り等に作業風景と出くわすこともしばしば。
また耳を澄ますと、あちこちのビルや建物から「仙台すずめ踊り」のお囃子の音が聞こえてきます。設営された11基の山鉾は至近距離で見学できますし、3日前には提灯が点ってお祭り気分をさらに盛り上げます。
市民広場「伊達の風ステージ」で演舞を満喫

市民広場演舞場の「伊達の風ステージ」
仙台すずめ踊りや鹿踊剣舞、和太鼓など沢山の舞台イベントを楽しむなら市民広場演舞場の「伊達の風ステージ」へ足を伸ばしてみて。舞台イベントでは奥州・仙台おもてなし軍団「伊達武将隊」をはじめ、たくさんのご当地キャラクターも登壇します。
イベントの合間にオープニングセレモニーや出陣式、表彰式などの式典も行われるため、見物にあまり時間が取れない、という人でも十分にお祭り気分が味わえます。
「杜の市」で宮城・仙台の「食」を堪能
メイン会場となる市民広場には宮城県内の特産物を中心にした出店などの飲食店が立ち並び、道路を挟んだ勾当台(こうとうだい)公園では、企画屋台村「杜の市(もりのいち)」では仙台市内や宮城県内で“いま”話題になっている旬のお店をピックアップ。地元の特色あるさまざまな料理をその場で堪能できます。
江戸時代にタイムスリップできる「伊達縁」(だてえにし)
勾当台公園では時代まつり独特の雰囲気を感じさせる藩政時代の街並みを再現した「伊達縁(だてえにし)」が登場。寄席や茶屋、居酒屋に野点、お化け屋敷、殺陣演武などが楽しめます。また入口近くの「伊達の職人屋台」では篠笛職人直伝の篠笛の吹き方ワークショップをはじめ提灯名入れ、トンボ玉や和雑貨販売などがあり、和の魅力満載です。
火縄銃に古式弓道。体験型イベントなら錦町公園へ
メイン会場から少し離れた錦町公園では、伊達古式火縄銃の演武、仙台市内七つの消防団による伝統梯子乗りなど古式ゆかしい伊達の伝統的なイベントが行われます。伝統弓術体験や時代衣装の着付け体験、吹き矢や手裏剣投げ、紙手裏剣作成などの忍者体験もあり、和の日本文化に直接触れることができます。
新緑のケヤキ並木に映える鮮やかなパレード

定禅寺通りパレード(仙台すずめ踊り)
定禅寺通では、色鮮やかな揃いの法被を身にまとった140以上の祭連(まずら)、約4,500人が華やかな「仙台すずめ踊り」を披露します。

定禅寺通りパレード(子すずめ隊)
笛や太鼓の賑やかなお囃子に合わせて躍動的に跳ね踊る小気味よい雀たちが目を楽しませてくれます。他にも「時代絵巻巡行」や、きらびやかな装飾が施された「山鉾巡行」、「政宗公(青葉神社)神輿」の渡御などの時代絵巻が繰り広げられます。
そして、本まつりのフィナーレを飾るのは「すずめ大流し」。踊り手たちが大通りに勢揃いして2日間の祭りを締め括ります。
夜祭りを楽しむなら宵まつり
仙台・青葉まつりでは初日の1日目を宵まつり、2日目を本まつりと呼びますが、その大きな違いは終了時間。宵まつりは夜21時まで(稲荷小路の「宵々すずめ」は22時30分まで)夜の祭りを楽しめますが、本まつりは日暮れ前の17時には終了してしまうので気をつけてくださいね。
仙台すずめ踊りとは?

仙台すずめ踊りの様子。中央はイメージキャラクター「青葉すずのすけ」
仙台・青葉まつりでも披露される「仙台すずめ踊り」。仙台市内のさまざまなお祭りで披露される踊りで、かつての伝統を受け継ぎながら現在は誰でも参加できる仙台の踊りとして親しまれています。
発祥は、仙台城が完成した1603年のこと。お祝いの宴席で築城に関わった石工たちが伊達政宗公の前で即興の踊りを披露しました。小気味よいテンポ、躍動感あふれる身振り、その跳ね踊る姿が餌をついばむ雀の姿に似ていたことや、伊達家の家紋が「竹に雀」だったことなどから、「すずめ踊り」と呼ばれるようになったのだそう。
伝承されてきた基本の踊りをベースに、老若男女誰でも楽しめるよう練り直しを重ね現在の「仙台すずめ踊り」に。伊達武将隊で踊り方が紹介されているため、仙台・青葉まつりに足を運ぶ際はぜひ事前にチェックしてみて。
仙台・青葉まつりを彩る11基の山鉾

政宗公の半身像が乗った政宗公山鉾(ぷらんどーむ一番町交差点付近)
現在仙台・青葉まつりで巡行する山鉾は現在11基。そのすべてが仙台市近辺の企業または団体によって制作・運行されています。制作時には昔の絵や古写真などを参考にして復元図を描き、専門の大工がその専門知識を活かして図面を仕上げるという徹底ぶり。初日の宵まつりでは東日本大震災の復興を祈願して3基が巡行します。大きさは全長5.2~6.2m、重量5.5~8tほどだそうです。
1.政宗公兜山鉾(まさむねこうかぶとやまぼこ)

弦月の前立てが印象的な政宗公兜山鉾(サンモール一番町金港堂書店前)
兜姿の伊達政宗公の胸像を頂く山鉾。祭に華を添える政宗公の正室愛姫(めごひめ)を乗せて仙台の発展を願います。愛姫役は、姫が12歳で伊達家に嫁いだことにちなみ、公募による小学6年生が扮します。
2.七福大太鼓山鉾(しちふくおだいこやまぼこ)
藩政時代、仙台の城下町に時刻を告げたという大太鼓にちなみ、直径2.2mもの七福神太鼓を載せた山鉾。雄大で心の奥底まで伝わるような“七福神の響き”と呼ばれる大音声を轟かせながら皆さんに幸せをもたらします。
3.大鯛山鉾(おおだいやまぼこ)

大鯛山鉾の絵馬(サンモール一番町壱弐参(いろは)横丁付近)
三陸沖を控え、海の幸の恵み豊かな仙台で大漁豊饒を祈願して巡行します。巨大な鯛の飾りと山鉾の周りに取り付けられた沢山の絵馬が特徴。停止演技では、恵比寿様の大鯛釣りが賑やかに繰り広げられます。
4.青葉駒山鉾(あおばごまやまぼこ)

青葉駒山鉾(サンモール一番町)
日本の三銘駒に数えられる木下駒(別名青葉駒)。朝廷に献上する名馬の無事を祈り作られた工芸品の青葉駒を山鉾の上に掲げ、勇ましい引手や薄衣をまとった萩娘などが初夏の杜の都に雄姿を飾ります。
5.雅山鉾(みやびやまぼこ)
国宝の大崎八幡宮に見られる桃山建築様式を取り入れた京文化を偲ばせる優美で華麗な装飾が施されています。JR仙台支社の社員とその家族による演舞にご注目。
6.恵比寿山鉾(えびすやまぼこ)
商売繁盛、除災招福の神様として親しまれている恵比寿様。商都・仙台の将来に更なる隆盛と幸福をもたらすようにとの願いが込められています。地元の老舗百貨店「藤崎」の社員による華やかな演舞も披露されます。
7.囃子山鉾(はやしやまぼこ)

能や狂言など幅広い芸能を好んだ伊達政宗公にちなみ、山鉾の上で賑やかな笛や太鼓を奏で、色とりどりの衣装を身にまとった踊り手がお囃子にあわせて華やかな踊りを披露します。
8.政宗公山鉾(まさむねこうやまぼこ)
毎年、仙台市長、仙台市議会議長、青葉まつり協賛会長が当時の衣装を身に着けて搭乗します。飾りには仙台市の市章にも使われている伊達家の三引両紋があしらわれています。仙台市職員や仙台市民有志の方々が威勢良い掛け声とともに先導します。
9.御神船山鉾(ごしんせんやまぼこ)
藩政時代から、貞山運河の物資輸送や漁業をはじめとする水産業のために活躍した船舶と、塩釜神社の海渡りに使われた御神船の雄々しい姿を表現しています。
10.大黒天山鉾(だいこくてんやまぼこ)
五穀豊穣の神様・大黒天の像を載せた山鉾。仙台に居を構える報道機関6社によって運行されます。
11.唐獅子山鉾(からじしやまぼこ)

愛嬌のある唐獅子山鉾(ぷらんどーむ一番町)
火伏せ、悪魔祓い、息災延命を祈祷する唐獅子がモチーフの山鉾。威風堂々として迫力満点ですが、そのどこか愛嬌のある表情をのぞかせて人気を呼んでいます。
地元民が教える!仙台・青葉まつりのツウな楽しみ方
オリジナル木札でお祭り気分

木札
お祭りグッズのおすすめは法被姿の踊り手が揃って身に着けている「木札」。いくつか種類がありますが、参加年が分かる元号入りが売れ筋です。更に「この木札の裏に自分の名前を入れて貰えるんだよ」と隣に居た常連の方が教えてくれました。
購入した木札を持って何十種類もの絵柄から好みのものを選んで申し込むと、1時間ほどでオリジナルの名入れ木札の完成です。漢字やひらがな以外にアルファベットも対応可能。「外国の方はわざと漢字に直して作る人も多い」のだそう。

名入れ見本。ここから好きな柄を選ぶ
宵まつり限定。「飛び入り雀・祭雀蓮(まじゃらいん)」で祭りに参加
まじゃらいん、とは「どうぞご一緒に」という意味の宮城の方言です。その場で覚えた振り付けで、誰でもすずめ踊りに参加できます。集合時間に受付場所へ直接行けくだけでOK。市民広場の大きな舞台の上で踊るほか、定禅寺通りで踊ることもできるので、ぜひ参加してみてください。
本格的に体験したい人は、つなぎ横町で法被(はっぴ)のレンタルや手作り扇子、すずめのメイクができるコーナーも設置してありますのでチェックしてみてください。
山鉾の上からの眺めを楽しんでみませんか

はっぴ姿のおじさんたちが「インスタ映えするよ!」と連呼(ぷらんどーむ一番町)
11基ある山鉾のうち、唯一試乗体験できるのが「大黒天山鉾(だいこくてんやまぼこ)」です。宵まつりの昼頃に「山鉾拝覧会」と銘打って、法被姿の男衆たちが記念撮影をしてくれるほか、記念品まで貰えます。5m以上の高さから眺める祭りの様子はどんな風に見えるのでしょう。
ここでしか食べられない!地域色豊かな味を楽しもう
仙台・青葉まつりでは、様々な屋台が出店。地元ならではの名物やB級グルメはもちろん、ここでしか食べられない特別メニューなど多彩なグルメが揃っています。
仙台市認定商品!緑色の「あおば餃子」

クセのないあおば餃子(4個入り300円)
まるで新緑のような青々とした緑が美しいあおば餃子は、特産の仙台雪菜をふんだんに皮に練りこんでいます。野菜の甘さがとても風味豊かで皮はモチモチ、冷めても硬くなりにくく、カルシウムやビタミンAも豊富ないいこと尽くしの餃子です。
苺農家のまかないスイーツ「いち氷」

地元でも話題の「いち氷」。一度食べたらリピート必至(屋台村「杜の市」)
宮城県南部の山元町は県内でも指折りのイチゴの産地です。「いち氷」はそこで大切に育てられた甘熟イチゴの中でも特に甘みが強くて、実が柔らかいものだけを使ったスイーツ。イチゴをそのまま凍らせてかき氷状にしたもので、噛むごとにイチゴの旨みと甘みが口の中に広がります。
さらに同じ甘熟イチゴをとろとろに煮込んだ秘伝のジャムと特製ミルクを加えたらもう向かうところ敵なしの美味しさです!
小腹が空いたら宮城の郷土料理「おくずかけ」

野菜たっぷりの温麺入り熱々あんかけ
「おくずかけ」というのは宮城の郷土料理の一つ。椎茸でだしをきかせた醤油ベースの汁に、細かく切ったたっぷりの野菜と白石温麺を加え、片栗粉でとろみをつけた暖かいあんかけ料理です。
お盆、お彼岸の時期になると食卓に並ぶ「家庭料理」なので扱うお店が少ないのですが、仙台駅地下のレストラン街にある「みやぎ乃」のランチメニューで味わえます。
踊りと食を楽しむ「仙台・青葉まつり」を2日間満喫しよう
街全体が緑に包まれ、仙台がまさに「杜の都」となる初夏に開催される「仙台・青葉まつり」。鮮やかな新緑と爽やかな風の中で繰り広げられる伊達政宗公がメインの時代祭りです。
宵まつりは午前11時、本まつりは10時からの開催のため、朝のうちに北仙台にある「青葉神社」や青葉山の「仙台城址」まで足を伸ばして伊達政宗公の痕跡を探してみるのもいいですね。
5月の仙台は、日中は汗ばむ陽気でも、朝夕はひと桁台の気温まで下がることもしばしば。いつでも羽織れるような長袖の上着を一枚用意しておいてください。