日本では、四季折々でさまざまな花が見られます。春の桜、夏のヒマワリ、秋のコスモス……季節にあわせて多彩な花々が開花し、もちろん雪の降る冬でも、キレイな花が見られるのです。
この記事で紹介するのは、日本の冬を代表する冬の花「スイセン」。日本全国各地でスイセンの群生は見られますが、都内にも可憐な花を咲かせるスイセンを楽しめるスポットはたくさんあります。
この記事では、スイセンの特徴や逸話についてだけでなく、都内でおすすめの美しいスイセンを楽しめるスポットを合わせて紹介していきます。
日本の冬を代表する花「スイセン」
スイセンの絶景スポットを紹介する前に、まずはスイセンがどのような花なのか、簡単におさらいしておきましょう。
日本の冬を代表する花としても親しまれているスイセンは、ヒガンバナ科スイセン属の多年草の植物。別名「雪中花」とも言われています。まっすぐ伸びた茎と葉を持ち、ラッパのような白色で上品な花を咲かせます。花を咲かせるためには一定の寒さが必要である性質も持ち合わせています。
「スイセン」という日本での呼び名は、漢字の「水仙」を音読みしたもの。その芳香と美しい花の姿から、「水辺の仙人のよう」という意味を込めて名付けられたとされています。
原産地は、スペインやポルトガル、北アフリカ。そこから世界に広がり、園芸用などに改良された栽培しやすい品種が誕生しました。現在色や形の異なる品種が30種類ほどあり、様々な場所で育てられたり、咲き誇っていたりします。

日本でもっともポピュラーな「ニホンズイセン」
スイセンと一言でいっても、その種類はさまざま。日本でもっともよく見られるのが、「ニホンズイセン(日本水仙)」とよばれる、12月〜2月ごろに開花する寒咲きのスイセンです。平安時代末期ごろに中国から日本に伝来してきたといわれ、ほのかに甘い香りを放ちます。
1つの茎から3〜4つほどのかわいらしい花をつけますが、その見た目とは裏腹に実は毒を持っています。もし口に入れてしまうと、スイセンの持つ毒が食中毒などを引き起こし、強い嘔吐症状をもたらしてしまうそうです。十分注意してくださいね。
花言葉は「自己愛」
さて、白く美しい花を咲かせ、芳しい香りを放つスイセンですが、花言葉は「自己愛」。これは、スイセンの学名「Narcissus(ナルシサス)」にも由来する、ギリシャ神話が元になっているのです。
ギリシャ神話に登場する「ナルキッソス」は、「自分自身の姿を見なければ長生きできる」と予言され誕生した青年。何人もの女性に求愛されるほどの美形の持ち主でしたが、ある日、泉に映った自分の姿を見て、そのあまりの美しさに一目惚れ。泉に映る自分にキスをしようと近づき、そのまま泉に落ちて水死してしまうのです(諸説あり)。

スイセンは海岸をはじめとした水辺に自生する
そして、泉の水辺に生えるスイセンへと変わった……。そんな話を元に、スイセンの花は「ナルシサス(またはナルキッソス / ナルシス)」と名付けられ、花言葉は「ナルシシスト(ナルシスト)」を意味する「自己愛」になったのです。
東京都内のスイセンの名所5選
それでは、スイセンの豆知識を知ったところで、都内でスイセンの絶景を楽しめるスポットをチェックしていきましょう。ニホンズイセンは10月〜11月ごろに植えられ12月〜2月に見頃を迎えますが、そのほかのスイセンの多くは、2月〜4月に開花。
つまり、冬の間じゅうさまざまなスイセンを楽しむことができるのです。スイセンとともに、春へと移ろっていく四季の姿を楽しんでみてはいかがでしょうか。
葛西臨海公園
東京湾に面した都立公園で、都民の憩いの場としても愛されている「葛西臨海公園」では、毎年1月ごろからスイセンが見頃を迎え始めます。
葛西臨海公園観覧車すぐ近くに、スイセン畑が広がる
植えられているのは、5万球、20万本ものスイセンたち。なかには、日本におけるスイセンの三大群生地としても有名な「越前海岸」のある福井県福井市から寄贈された※エチゼンスイセンの姿も。
葛西臨海公園のランドマークでもある観覧車の下に群生する爽やかなスイセンが、園内を彩ってくれます。
また葛西臨海公園では、毎年スイセンが見頃を迎える頃に「水仙まつり」を開催。

葛西臨海公園に咲くニホンズイセン(写真提供:公益財団法人東京都公園協会)
スイセンの出展ブースや特産品の販売、楽器演奏、ストリートパフォーマンス、フラワーアレンジメント教室など、子どもから大人まで楽しめるイベントに。
スイセンだけでなく、さまざまな視点から自然と触れ合える「水仙まつり」に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
(※)エチゼンスイセン:分類上はニホンズイセン。越前海岸に群生するニホンズスイセンは「エチゼンスイセン」というブランド名がつく
【葛西臨海公園 スイセン情報】
本数:20万本(5万球)
品種:エチゼンスイセン(ニホンズイセン)
見頃:1月中旬〜2月中旬
住所:〒134-0086 東京都江戸川区臨海町6-2-1
アクセス:JR京葉線 葛西臨海公園駅より 徒歩(約1分)
【水仙まつり 概要】
開催期間:2023年2月11日〜2月12日
時間:各日10:00〜15:00
場所:葛西臨海公園スイセン畑、芝生広場ほか
内容:水仙ガイド、下田市・洲本市・福井市の特産品販売、大道芸(東京都認定ヘブンアーティスト「SOBUKI」によるパフォーマンス)など
公式HP:葛西臨海公園
国営昭和記念公園
昭和天皇御在位50年の記念事業の一貫として誕生した、東京都立川市の「国営昭和記念公園」。総面積1.8㎢を誇る同公園でも、美しいスイセンの姿を楽しむことができます。
国営昭和記念公園で楽しめるニホンズイセン(写真提供:国営昭和記念公園)
スイセンが植えられているのは、園内「日本庭園」と「花木園」の2カ所。国営昭和記念公園ではニホンズイセンだけでなく、黄色い花を咲かせる「ラッパズイセン(ラッパスイセン)」も見られます。
ラッパズイセンは、花弁の中央にある筒状の「副花冠(フクカカン)」がラッパのような突き出した形をしているのが特徴です。副花冠が小さなニホンズイセンと比べると、その違いは一目瞭然。ぜひ、ふたつのスイセンを見比べてみてくださいね。

黄色の花を咲かせるラッパズイセン。ニホンズイセンより大ぶり(写真提供:国営昭和記念公園)
【国営昭和記念公園 スイセン情報】
本数:約5,000株
品種:ニホンズイセン、ラッパスイセン
見頃:1月上旬〜3月上旬
住所:〒190-0014 東京都立川市緑町3173
アクセス:JR青梅線 西立川駅より 徒歩(約2分)
公式HP:国営昭和記念公園
スイセンと同時期に見ごろを迎える国営昭和機縁公園の花
国営昭和記念公園ではその広大な敷地のなかで、春夏秋冬さまざまな草花を見ることができます。スイセンとおなじく冬に見ることができる2つの花もあわせてご紹介します。
セツブンソウ
小さな愛らしい花を咲かせる「セツブンソウ」(写真提供:国営昭和記念公園)
日本全国に分布している野花「セツブンソウ」。小さな白い花を咲かせます。開花時期は、名前の通り節分(2月3日)の前後で、1月下旬〜2月下旬ごろまで楽しめます。茶色の土の上に、羽を落としたように可憐な花を咲かせるセツブンソウたちは、園内の「こもれびの里休憩所」脇で見ることができます。
スノードロップ
しずくのような姿で花開く「スノードロップ」(写真提供:国営昭和記念公園)
こちらは、しずくのような形の花弁を持つ「スノードロップ」。蕾を吊り下げたような形をしていますが、地面に向かって花を咲かせる植物です。別名「マツユキソウ(待雪草)」とも呼ばれ、1月上旬〜3月上旬に見頃を迎えます。園内では、「花木園」展示棟周辺で見ることができます。
まだまだ寒い時期に花を咲かすことから、古くから春の始まりを知らせる存在として大切にされてきた植物です。
浜離宮恩賜庭園
東京都中央区に広がる「浜離宮恩賜庭園」。潮入の池(実際に海水が出入りしている池)とふたつの鴨場(野生の鴨を捕獲するための猟場)を持つ、江戸時代を代表する大名庭園のひとつです。

園内各所で花を咲かせるスイセンたち(イメージ)
春の桜や、秋の紅葉を楽しめる名所としても知られていますが、冬にはスイセンの姿も見られます。スイセンは園内各所に咲いていますが、園内北東側に広がる梅林の近くに多く群生しています。
桜が咲く前に、一足早く春の訪れを感じてみてはいかがでしょうか。
【浜離宮恩賜庭園 スイセン情報】
品種:ニホンズイセン
見頃:1月上旬〜4月
住所:〒104-0046 東京都中央区浜離宮庭園1-1
アクセス:都営地下鉄大江戸線 築地市場駅・汐留駅 / ゆりかもめ 汐留駅より 徒歩(約7分)
公式HP:浜離宮恩賜庭園
スイセンと同時期に見ごろを迎える浜離宮庭園の花
ナノハナ(菜の花)
庭園内には、スイセンのほかにも冬に見頃を迎える花がたくさん。そのうちのひとつが、春も間近に迫った3月上旬ごろに満開を迎える「ナノハナ(菜の花)」です。
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都会のど真ん中でナノハナ畑が見られる名所でもある(写真提供:公益財団法人東京都公園協会)
庭園の一部にナノハナが敷き詰められ、黄色のじゅうたんが敷かれたような絶景を望むことができます(園内マップ「お花畑」がナノハナが咲く場所)。3月の上旬〜中旬には庭園内の梅も花開き始め、ナノハナの黄色と梅の赤と白を一枚の写真に収めることも可能。
新宿御苑
東京都新宿区に広がる公園「新宿御苑」。風景式・整形式庭園や、日本庭園、大温室など、自然に触れられるぜいたくな名所を数多く有する施設です。都会の喧騒を忘れ、のんびりと自然に包まれる時間をすごすにはぴったりの新宿御苑では、春夏秋冬の花々が季節を彩ります。
新宿御苑で見られるスイセンは、全部で3種類。ニホンズイセンとラッパズイセン、ペーパーホワイトです。
12月〜2月に花開くニホンズイセン(写真提供:環境省新宿御苑管理事務所)
ラッパズイセンは少し遅めの3月中旬〜4月上旬に開花(写真提供:環境省新宿御苑管理事務所)
ペーパーホワイトは、地中海原産の球根植物。スイセンの一種で、最大の特徴は透き通るような白さの花弁にあります。名前も「紙のように白い」花弁を持つことに由来するといわれています。ニホンズイセンと同じく、12月上旬〜2月上旬に花を咲かせ、芳香があります。
真っ白な花弁が特徴の「ペーパーホワイト」(写真提供:環境省新宿御苑管理事務所)
【新宿御苑 スイセン情報】
品種:ニホンズイセン、ラッパスイセン、ペーパーホワイト
見頃:12月上旬〜4月上旬
住所:〒160-0014 東京都新宿区内藤町11
アクセス:<新宿門まで>
東京メトロ丸ノ内線新宿御苑駅 出口1より 徒歩(約5分)
東京メトロ副都心線新宿三丁目駅 E5出口より 徒歩(約5分) ほか
備考:酒類持込禁止、遊具類使用禁止(こども広場除く)
公式HP:新宿御苑
スイセンと同時期に見ごろを迎える新宿御苑の花
冬にはスイセンのほか、11月下旬〜1月上旬に見頃を迎えるカンツバキや、落葉低木のロウバイなども園内で見ることができます。
中国原産で、江戸時代に日本にやってきたとされる「ロウバイ」は、ロウ細工のようなツヤを持つ黄色の花を咲かせるのが特徴。漢字では「蝋梅」と書き、旧暦の「蝋月(12月)」に花を咲かせることから名付けられたとされています。
黄色の小さな花をつける「ロウバイ」(写真提供:環境省新宿御苑管理事務所)
京王百草園
「京王百草園」は京王電鉄が運営している自然庭園。
冬にはニホンズイセンが見ごろを迎えます。園内でこの時期に同じ見ごろを迎えるのは、ロウバイや早咲き梅です。季節ごとに移り変わる四季折々の草花を楽しむことができます。

京王百草園のニホンズイセン
江戸時代に小田原城主の妻であった寿昌院慈岳元長尼が徳川信康追悼のために、松連寺を再建しました。その松連寺が廃寺になったのち、作られたのが京王百草園です。
江戸名所図会にも紹介されたとされ、歴史的に著名な小説家が訪れています。
園内には松尾芭蕉の句碑や、若山牧水の歌碑が置かれており、有名な景勝地として昔から知られているようです。
園内には季節ごとに彩り豊かな花が咲き乱れ、どの時期に訪れたとしてもその自然の美しい風景を眺めることができるでしょう。
【京王百草園 スイセン情報】
品種:ニホンズイセン
見頃:12月上旬〜4月上旬
住所:〒191-0033 東京都日野市百草560
定休日:水曜日
入園料:大人:300円、子ども:100円
アクセス:京王線百草園駅下車 徒歩(約10分)
聖蹟桜ヶ丘駅または高幡不動駅 からタクシー(約10分)
備考:ペット連れ禁止
公式HP:京王百草園
日本水仙三大群生地
日本には、「日本水仙三大群生地」と呼ばれる名所が存在します。それは、福井県の越前海岸、千葉県の鋸南町、兵庫県の淡路島の3つ。三大群生地では、いずれもじゅうたんのように群生するスイセンの姿を楽しめます。
福井県越前海岸
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ここで咲くニホンズイセンは「越前水仙」というブランド名を持つ
千葉県鋸南町「江月水仙ロード」
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ハイキングを楽しみながらニホンズイセンを楽しめる
兵庫県淡路島「立川水仙郷」
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400万本のスイセンが花開く「立川水仙郷」
都内のスイセンの名所で冬の絶景を楽しもう
日本には、春夏秋冬季節を告げる花々があります。今回紹介したニホンズイセンは、冬を代表する日本の花。雪景色などがなかなか望めない都内の冬を彩ってくれる、可憐な植物です。
今回紹介した名所以外にも、都内ではスイセンが見られるスポットはさまざまあります。ぜひ冬の都内観光やデートの際に、スイセンが群生する景色を楽しんでみてはいかがでしょうか?